漫言 佐藤一斎
落落乾坤人亦無 落々たる乾坤 人も亦た無し
誰歟自古是真儒 誰か古より是れ真儒
唯名與利多為累 唯だ名と利と多く累ひを為す
一過此関纔丈夫 一たび此の関を過ぐれば纔かに丈夫
良い詩ですな。普通このような理屈で論じた詩は臭味があるものだが、相当の人でないとこうはいかないものです。多少お説教じみた所はあるが、これくらいは当たり前の話です。一斎は教育者の面が世間には前面に出ていますが、詩人の側面をもっと強調したいものです。人生を生きる上で、人はこうありたいものです。
佐藤一斎は大儒学者、教育者であり、言志四録の著者として有名であります。幕末から明治にかけて、時代の先頭に立つ人物を多数育てている功績は大であります。
晩年も昌平坂学問所の儒官として活躍され、世の中に種々の提言をされております。現代の国政の指導者も度々、一斎の言葉を引用しておりますのは御存知の通りです。
私は今八十六歳ですが、一斎のように元氣で現役を続けていきたいと思います。
私が理事長を務めております斯文会の湯島聖堂で、毎月一回講話を重ねている中斎塾フォーラムの深澤塾長が、『陽明学のすすめZ』として佐藤一斎を執筆致しました。
この著作全体に、深澤賢治氏の実業界における豊富な経験と不断の勉学が表れており、佐藤一斎の教育者・指導者としての人物像が的確に書かれています。是非、読むことをお勧めしたい。
本書が広く読まれ、一斎の学んだ道を顧みるとともに、今日の社会について考える拠りどころとなれば嬉しく思います。
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<推薦のことば>
佐藤一斎顕彰会会長・NPO法人いわむら一斎塾理事長 鈴木隆一
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平成14年(2002年)10月26日。
岐阜県恵那郡岩村町(現恵那市)では佐藤一斎生誕230年を記念し、坐像の除幕記念式典が行われた日でした。
全国から一斎先生を崇敬し、その教えを深めたいと願う多くの方が参加されました。
翌日は、「いわむら一斎塾」と銘打って町内五会場に分かれ勉強会を開きました。五つのテーマのうちの一つを受け持っていただいたのが当時株式会社シムックスの深澤賢治社長でした。テーマは「山田方谷の『理財論』は未来を切り拓く」でした。町指定文化財に指定されている木村邸の書院造りの和室で熱気溢れる講義に部屋いっぱいの受講者が熱心に耳を傾けていた光景が思い出されます。
あれから16年。
この度、深澤氏が「陽明学のすすめZ 人間学講話 佐藤一斎」を上梓されました。
佐藤一斎を研究する者は、必ず高瀬代次郎著「佐藤一斎と其門人」(大正11年刊・南陽堂本店)を繙きますが、文語体、旧仮名遣い、多くの漢文資料が引用されるなど、解読には大変な苦労をします。
しかし、本書は筆者が永年温めておられたものが一気に筆を走らせたように感じます。優しい筆致でとても分かりやすく書かれ、佐藤一斎の人物像、「言志四録」、漢詩などこれまでにない一冊で、佐藤一斎の全貌がわかるようになっています。正に待望の一冊です。
今年は明治150年。
維新の礎を築いた多くの志士たちの精神的支柱となった「言志四録」。
現在、グローバル化が急速に進むなかにあって、今まで以上に日本という国と日本人としてのアイデンティティーを養うにも本書が必ず役立つものと確信します。
若い人から高齢者まで幅広い年齢層の方に豊かな人生を送っていただくためにもぜひ本書をお読み下されば幸いです。
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