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書籍案内(「警備保障の全て」第4版)
まえがき 深澤賢治

 『警備保障のすべて』第3版を2003年5月1日に発行し、2023年に第4版を発行することになった。この間に警備業界もかなり変わった。2021年末では、警備業界の市場規模は3兆4537億円となり、警備員数も58万9938人となった。これは警察官の数(25万9719人、2022年4月1日現在の定員数)と対比すると、2倍強となっている。また、そのうち女性の警備員数は3万9812人であり、警備業者の数も1万359業者となった。
 世の中をみると、2022年7月8日には、安倍晋三元総理大臣が銃撃され死亡するという事件が発生した。この事件は大きく時代が転換したことを象徴していると思う。世界的な視線でみた場合、新型コロナウイルスというウイルスと人類の戦い、ロシアによるウクライナヘの軍事侵攻、欧米を中心とした金利の急激な上昇等々、ここ数年異常な事態が立て続けに起こっている。日本国内は国債発行が令和2年(2020年)度末で1074兆円にのぼり、日本の経済破綻が取り沙汰される昨今である。また、スリランカが国家破産を起こしIMFと再建に関する交渉を開始したということも耳目に新しい。
 日本国内に焦点を絞ってみると、日本は一言でいえば平和押れしすぎていると言わざるを得ない。確かに終戦以降、平和が続いているが、ロシア・中国・北朝鮮の脅威に晒されていることはご水知の通りである。さらに国内は人々の心がすさみ、特殊詐欺や児童虐待などの社会的弱者に対する犯罪が増大している。
 世界的にゼロ金利が当たり前になった後、現在は各国で利上げが進んでいる。その中で日本は、日銀黒田東彦総裁のもとゼロ金利政策をとっている。その結果、国内では不況下における物価高といわれるスタグフレーションの危険が急激に増している状況である。
 ご承知の通り日本の借金は終戦時を大幅に超している。その視点で考えると、スタグフレーション以降はハイパーインフレが想定され、日本国は経済破綻を起こす危険性が非常に高いと思われ る。「ネバダ・レポート」は参考にすべきであろう。
 日本でそのような非常事態が起きた場合、警備業は従来の警備業に加えて非常事態における警備サービスが急速に登場してくることになると考える。
 自分の身を自分で守らず、安全を金で買う風潮が広がっている中で、警備業者は警戒棒・警戒杖.刺股・非金屈製の楯等々を使い、社会の具体的要求に応えることになるであろう。
 加えて、烏獣被害対策業務にあたっている警備業者を含む民間企業は、銃による事故が発生しないよう厳格な管理を実施し、対象捕獲獣を動けなくさせる麻酔銃や電気ショック等々の取扱い能力も向上させねばならない。
 さらに日本の国を守るという前提で警備業が発展してゆく場合は、自衛隊?警察の補完としての警備業が重要視されることになると推測している。現時点の警備員の総数は約60万人であり、警察の補完業務を請け負わざるを得ないのではないかとも考えている。
 このように非常事態へ向け、警備業の変革も考えておかねばならない。そういう社会的要請を踏まえた上で、平和が継続していく間は従来の路線を継続しつつ、警備業の将来を考え対応策を練っていけば良いと思っている。
 私は警備業務に携わる者として、今の世の中を深く憂い、この本を世に送り出して社会のお役に立ちたいと願っている。